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塩についての食事ガイドライン:ガイドラインを

混乱させるべきか?そうだ!

The Dietary Guideline for Sodium: Should We Shake It Up? Yes!

By David A McCarron

The American Journal of Clinical Nutrition 2000;71:1013-1019

 

(訳者注:原報はナトリウムとして書かれているが、分かり易いように塩と意訳した。

マッカロンはカリフォルニア大学デイビス校の栄養学科客員教授で

オレゴン保健科学大学の前腎臓学部長。減塩反対論者)

 

要約

 公衆保健政策の援助の下で確立された食事ガイドラインは一般市民の健康的な食事を促進させることを意図している。ガイドラインは多くの一般人よりも老人に利益があるように設計された研究や出版物を基に作成されている。過去20年間に我々の栄養科学の知識、特に血圧制御における塩の役割の理解が劇的に深まった。観察研究やランダム化比較試験からの無数のデータから、血圧制御と高血圧における塩の役割に関する正しい関係に最終的に関与している情報を得た。塩はかつて信じられていたような唯一曲解されていた悪者ではなく、高血圧が最終結果となる制御系に複雑に関係している多くの要因の中で複雑に相互作用している一つの要因にすぎない。現在利用できる塩摂取量に関するデータで、減塩による利益とリスクの両方と正常血圧成人に及ぼす最低限の特別な塩の血圧効果を含めて、これからの公衆保健勧告は注意深く得られた矛盾のない結果と合理的な科学に基づかなくてはいけない。

 

はじめに

 塩が高血圧症の病因における悪者であると言う長く考えられてきた前提は数十年間高血圧の非薬物療法を支配してきた。その考えが医療哲学に侵害してきたにもかかわらず、この仮説は研究者達からも、あるいはこの分野の研究データからも十分には支持されて来なかった。1980年代の初めに、当時十分に答えられなかった疑問を生じさせると噂のあった塩と血圧との関係に対して発表された挑戦の第一波が来た。しかし、近年では塩と血圧との仮説の関係は、塩は役割を演じているが、確かに正常な血圧制御の大敵ではないことを明確に示してきた大量の新しい情報によって非常に弱められてきた。

 現在の塩摂取量ガイドラインは20年前に発表された書類に基づいている。その報告書の結論はそれより40年前に得られた多くのデータに基づいていた。正に過去5 - 10年で栄養研究と科学で行われてきた劇的な進歩を考えると、― 方法論の進歩と病態に及ぼす特別な栄養素やそれらの効果に関する知識の幅広い拡大があって― どの食事ガイドラインも入手できる最新で総合的な情報に基づいていることは明らかである。ここで我々は現在のガイドラインについて歴史的な正当性を調べ、一般的に信じてきた塩と血圧仮説に反証を挙げた当時の多くのデータをレビューし、公衆保健政策に真実を組み込む必要性を明らかにする。

 

歴史的展望

 100年以上前に塩は心血管疾患の病因で潜在的な要因の一つと強く主張されたが、その様な役割について病因と治療の観点からの理論的根拠を示唆する観察が報告されたのは1930年代と1940年代であった。クリーブランド・クリニックとデューク大学の研究者達の発表は血圧に及ぼす塩の影響を示しており、損傷した腎機能の実験で確かめる必要があった。動物実験で腎臓の大きさや血流が減れば、血圧は上昇すると予測されることをグロルマンらの研究は示した。腎不全に関係した悪性の高血圧は極端な低塩食で大きく緩和されることをデューク大学のケンプナーは報告した。

 この研究は1950年代始めにトビアンとビニオンの研究のように実験室研究を促進させた。その中で、血管中の血液量が動脈圧に関係していることが観察された。世界中の実験室は塩摂取量に関連させて高血圧を発症させようと試みたが、脊椎動物の生理機能と栄養を極端に操作した時だけ、動脈圧の上昇が予想されることを知った。これらの研究努力の全てにおいて、げっ歯動物に勧められている摂取量の10 – 20倍に増加させると、腎臓の(排泄)量は半分以下に減り、ミネラロコルチコイド・ホルモンが薬理学的投与量で与えられた。これらの実験条件は実際のヒトの状況を反映していないが、動物研究で劇的な生理学的操作に伴う血圧に及ぼす塩の報告された効果は一般的に受け入れられ、ヒトの血圧にも当てはまると推定された。

 1960年代始めに遺伝的な塩感受性ラットについてのダールらの記述は、腎臓量を外科的に減らさない、または血圧に塩誘因性の上昇をもたらすミネラロコルチコイド・ホルモンを投与して受け入れられる代替のモデルを提供した。ラットに勧められている量の10 - 20倍も多い塩摂取量をモデルはまだ必要とすることはしばしば見落とされた。再び、このことはヒトの状態とモデルとの関連について疑問を生じさせたが、疑問は生じなかった。しかし、ダールは、血圧に及ぼす塩摂取量の投与量応答効果があることを示すことの重要性を認識していた。今や有名になった彼のグラフ(図1)は世界中で塩摂取量の認知された幅広い範囲にわたってこの効果を示していると説明した。そのグラフは数多くのレビュー論文や教科書に掲載された。しかし、応答効果の解釈の基調となるデータ収集に用いた方法に関する情報は発表されていない。世界中の実際の塩摂取量パターンがインターソルトのような注意深く実行された研究によって決定されたのは20年以上も後のことであった。これらの研究からの結果はダールのグラフの結果とは一致しなかった。

図1 集団間の塩摂取量と高血圧との直線関係を“証明した”ダールの発表。作図に用いたデータの発表がないにもかかわらず、この図は長い間、塩-血圧神話の基礎であった。

 

 1960年代末期と1970年代初期に、研究者達は血圧に及ぼす減塩の効果についての最初の人による研究を行った。残念ながら、事実上、減塩の血圧に及ぼす効果を特徴付けるこれらの最初の試みの全ての結果には設計ミスによりひどい欠陥があった;ほとんどが統制されていなかった、ランダム化されていなかった、あるいは降圧剤使用者を被験者にしていた、そして正常血圧者を研究対象にしていなかった。1970年代末期に初めてルフトらが正常血圧者と高血圧者の両方で生理的摂取範囲を超えて短期間塩摂取量を操作した時の血流力学的なホルモン効果の画期的な代謝研究を始めた。しかし、これらの結果の発表は1979年の外科医報告書の発表後であった。その報告書は初期の仮定に基づいて塩を高血圧の明らかな原因として決めつけた;したがって、塩摂取量に関する国の保健政策が決められた。

 

判定の軽率な行動

 この判定の軽率な行動を取った時に、根拠の確実な科学的データによって支持された血圧制御における塩の役割に関する唯一の情報は次の通りであった:

1)過剰な塩摂取量は極端な条件下で血圧上昇を生じさせた。

2)腎疾患患者で厳しい減塩によって血圧は低下した。

3)動物研究は潜在的な遺伝関係を示唆した。

 これらのわずかな事実は塩摂取量、体液量、血圧との間の推定される関係に及ぼす塩摂取量と血圧との間の期待される関係と一致していたので、それらの関係は批判的な調査もしないで、高血圧の食事治療に関する公衆保健政策の根拠として即座に受け入れられた。

 塩摂取量に関する政府ガイドラインが決められる時、血圧に及ぼす塩摂取量の影響について分っていない批判的な情報は、前述したわずかな情報を重視するよりも高血圧治療について国の食事勧告の社会性と合理性にはるかに重視した膨大な数の問題点を含んでいた。次のようなデータが見つかっていない1)集団間の塩摂取量とヒトの動脈血圧や高血圧発症率との関係の注意深く実行された観察研究;2)正常血圧者と高血圧者の血圧に及ぼす減塩効果の上手く設計されたランダム化比較試験;3)塩摂取量と心血管疾患死亡率との関係の目向き調査;そして4)血圧に及ぼす単一栄養素の効果よりもむしろ食事パターンの効果と栄養素間の相互作用についての情報。

 この情報がないので、数多くの神話が塩摂取量-血圧仮説を巡って出来上がってきた。これらの中には、過去の世紀で塩摂取量が劇的に増加してきた、ヒトは必要量以上にはるかに多くの塩を摂取している、初期の研究で極端な条件下で観察された減塩の利益は通常の集団にまで外挿される、動物研究の結果はヒトに直接的に適用される、減塩の効果は集団間で変わることはない、と言った様々な仮説がある。アフリカ系アメリカ人の高い高血圧発症率は高い塩摂取量のためで、高血圧者の利尿剤による血圧低下効果は薬剤によるナトリウム排泄量の増加によるためであると推定された。個人レベルでは、塩摂取量の修正は他の栄養素の摂取量に影響を与えず、栄養素の相互作用は血圧制御に関係なく、減塩は全ての人に有益で、減塩は容易に達成され維持される、と仮定された。

これらの幅広い仮説を支持する、または異議を唱えるエビデンスはないので、多くの人々が仮定を信ずることを受け入れ、他の人々は狂乱した通説を信ずるようになる。これらの神話の普及を取り巻く原動力は、狂乱した通説は断じて根付かないで疑問が続くと言うラインフォールド・ニーバーに帰する言葉によって説明されるかもしれない;確かでない神話は二重に確かである。この仮説を巡って長い間猛威を振るってきた戦いを考えると、仮説が過去50年間以上引き起こしてきたデータの反乱にもかかわらず、仮説は論争を誘導する科学ではなく、むしろ仮説に関与した科学者達の固定化された意見であるように思われる。

 

神話を解体する

 1980年代初期以来の医学文献の徹底的なレビューは、医学界と社会でドグマとなってきた多くの神話に挑戦する塩摂取量-高血圧パラダイムにいくつかの重要な観点を示している。過去20年間におけるこの話題に関する科学における変遷の本質は人類の膨大なデータの獲得である。そのことは、公衆政策が最初に設定された当時には扱われていなかった塩摂取量と高血圧との関係といういくつかの観点を説明してきた。

塩感受性

 ナトリウムに関する試験結果が異なるために、血圧調整に及ぼす塩摂取量の影響に関する科学界の中ではとてもではないがコンセンサスを得ることが出来ないでいる。これらの研究結果の首尾一貫した特徴は結果の異質性である、つまり個人の血圧は食事介入に対する応答で幅広く変化する。高いまたは低い塩摂取量で、同じ研究内の参加者で、血圧は低下、上昇、変わらず安定していると報告された。これはオーバーラックらによる研究結果で明らかに示されている。彼等はこの異質性を研究した。高い塩摂取量の参加者163人の内18%は5 mmHg以上の血圧上昇を示し、一方、約15%は血圧低下を示し、参加者の66%は5 mmHg以下の変化を示すことを彼等は明らかにした。

 塩摂取量の変化に対する個人の血圧応答は、彼または彼女が塩感受性であるかどうかによって決められる。塩摂取量の変化に応答して血圧が変化する人々は塩感受性と考えられ、一方、塩摂取量の変化で血圧応答を起こさない人々は塩抵抗性と考えられる。塩感受性の概念は1970年代末以後に最初に使われ、近年では幅広い研究対象となってきた。塩感受性は今や再現性のある現象であることが示されてきたが、それでもなお何が塩感受性応答を構成しているのかと言う特別な定義またはこの条件を予め決めると言う一般的に容認された方法はない。

集団研究

 国立心臓・肺・血液研究所の財政援助で1984年に始まったインターソルト試験は20年前にダールが証明できなかった仮定を取り巻く疑問に最終的に答え、文化間や文化内で塩摂取量と血圧に関する信頼できるデータを提供するために設計された。インターソルトは24時間尿試料の収集と分析及びランダムゼロ血圧測定のために標準化された方法を使った。世界中の32ヶ国から52センターで研究に参加する10000人以上の被験者を募集した。ナトリウム排泄量は0.2 - 242 mmol/dの範囲であった:しかし、センターの48ヶ所では範囲はわずかに100 - 242 mmol/dであった。ナトリウム排泄量は個人で血圧と関係していたが、関係は強くはなかった。最低の塩摂取量である4センターからのデータを除くと、関係は見られなかった。センター内で加齢に伴って血圧勾配の調査は変数と中央ナトリウム排泄量との関係を確認した。最初のインターソルト発表の著者らが述べたように:“他の48センター間で、ナトリウムは…中央血圧値または高血圧発症率と[有意には関係]していなかった”。したがって、ダールが仮定したような塩摂取量と血圧との間の真偽の疑わしい密接な関係は示されなかった。

メタアナリシス

 過去10年間に、簡易統計解析と言う進歩した手段を使って適度の減塩の血圧効果を正確に立証するために、いくつかの研究グループが高血圧者と正常血圧者の両方の被験者で減塩のランダム化比較試験の十分な数を使ったメタアナリシスを報告した。表1に示すように研究3グループによるメタアナリシス結果の解釈は異なっていたが、数値(すなわち、血圧低下の程度)はあまり変わらなかった。平均して、正常血圧者集団の収縮期血圧は、試験によるが30%から50%の減塩で約1 mmHg下げられた。これらの結果は減塩推進者らが長く仮定して認めてきた効果にすら近づいていないし、全人口に減塩を勧めるための公衆保

表1 減塩のランダム化比較試験のメタアナリシスで観察された血圧変化の要約

血    圧    変    化

参加者

高血圧の参加者

正常血圧の参加者

 

高血圧者

正常血圧者

 

収縮期血圧

拡張期血圧

 

収縮期血圧

拡張期血圧

 mmHg

カトラーら

873

760

-4.9(±1.3)

-2.6(±0.8)

-1.7(±1.0)

-1.0(±0.7)

ミッドグレイら

1131

2347

-3.7(2.35,5.053)

-0.9(-1.3,1.85)

-1.0(0.51,1.56)

-0.1(-0.32,0.51)

カトラーら

1043

1689

-4.8(±1.04)

-2.5(±0.68)

-1.9(±0.72)

-1.1(±0.48)

グラウダルら

2161

2581

 

-3.9(3.0,4.8)

-1.9(1.3,2.5)

 

-1.2(0.6,1.8)

-0.26(-0.3,0.9)

( )内は幅か95%信頼区間

 

健政策勧告に影響を及ぼす政府保健機関の広範囲な努力を守るには不十分である。

心血管疾患の結果

 上手く設計され実行された疫学研究と臨床結果の結果を受け入れることは公衆保健主導の適正性を決定するには重要である;政策設定に関しても少なくとも同程度に重要で、心血管疾患による死亡数を減らすための減塩利益の決定的な証拠である。減塩に関して全人口に食事勧告案を決定するために、それは最も重要なエビデンスである。若年の発症率や死亡率を減らすようにはならないことは、明らかに公衆保健主導に関しての根拠を広げるための最高の社会的関心ではない。近年、減塩の逆効果について数多くの論文が発表されてきた。特に、政府が財政援助している2件のデータベースを引用すると、アルダーマンらはこれまで得られていた知識とは全く対照的に、減塩は致命的と非致命的な心血管疾患と関係していることを報告した(図2)

これら2件の論文は、結果を疑う他のデータベースを調べた減塩支持者達から直ちに厳しい非難を巻き起こした。アメリカ高血圧協会の1997年会でカトラーは多数危険要因介入試験の追跡データの解析を発表した。混乱因子について調整する前では、これらのデータはアルダーマンらが明らかにした混乱傾向と同様の傾向を示した。つまり心血管疾患に悪い効果は観察されなかった、と判断された。公衆政策に対して同等または多分、もっと大きな重要性の中で、カトラーは心血管疾患罹患率または死亡率を減らすために減塩の利益はないことを明らかにした。それ以来、スコットランド心臓保健研究、1998年のアメリカ心臓協会年会で発表されたフィンランドの報告、塩と血圧に関する国立心臓・肺・血液研究所で19991月に発表された第二回国民保健栄養試験調査の追跡調査データの解析などは心血管疾患死亡率に及ぼす減塩の確認できる利益を全て報告しなかった。したがって、減塩食の安全性の疑問が未解決であるかもしれないが、長年追跡してきた数万人の

図2 尿中ナトリウム排泄量の四分位数と心筋梗塞発症率との直線回帰に適合、アルダーマンらは高血圧男性の前向きコホート研究からのデータで有意な直線傾向を示した。

 

高い危険率の人々を含めて、減塩による長期間の心血管疾患利益を示さなかった6件以上の研究が現在ある。上手く設計された観察研究からのこれらの変わらない結果があると、

全人口の減塩政策は健康な人々にとって心血管疾患による死亡を減らすと言う点で何か意味ある利益がある、と言うことはほとんどありそうにないと思える。

栄養素の相互作用

 過去20年間で明らかになってきた別の分野のデータは栄養素の相互作用に関する情報と単一の栄養素よりもむしろ食事全体の血圧に及ぼす影響である。これらのデータが前に利用できておれば、食事と高血圧に及ぼす非常に異なった連邦政策をデータは具体的に立案できかかもしれない。我々は今や、高血圧の予防と治療で栄養素の相互作用と言う大きな役割のエビデンスを持っている。コッチャンらは、ダールの塩感受性ラットにおける

塩の高血圧効果がカルシウム・ホメオスタシスに混乱が現れることによって予見できることを最初に発表した。ヒトでは、カルシウム利尿の誘導は塩の血圧上昇機構を示しているのかもしれないことをカーツとモリスは仮定した。血圧上昇に及ぼすカリウムの保護効果はクリシュナらの臨床データによって示唆されている。彼等は短期間の厳しいカリウム制限が正常血圧者で塩感受性を誘引することを観察した。十分なカリウム摂取量は血圧調整に及ぼす塩の悪い影響に対して保護することを示したカウとバレット‐コーナーの疫学結果によっても血圧上昇に及ぼすカリウムの保護効果は示唆されている。

 本態性高血圧のカルシウム利尿を特徴付ける報告で、この代謝的な欠陥はナトリウムの比較的高い尿排泄量で一層明らかであると報告された。同様の観察は実験研究とヒトの研究の両方で今や述べられている。高塩摂取量の人々は、彼等のカルシウム摂取量の多寡に応じて血圧の高低グループに分けられるとハメットらは報告した。彼等は国民保健栄養試験調査Ⅰデータベースの解析に基づいて、マッカロンらは塩摂取量と血圧との間に弱い逆関係を報告した。この関係は後に同じデータベース使ったグルショーらによって支持された。彼等は、十分なカルシウムとカリウム摂取量と一緒の高い塩摂取量は実際的に血圧低下と関係していることを報告した。一纏めにすると、血圧に及ぼす電解質間の生理学的な相互作用の影響に関するこれらのデータは、これらの電解質が独立して機能しないことを示している。したがって、血圧低下のために全人口の食事勧告に焦点を置くべきは単一の栄養素摂取量を修正することよりもむしろ全ての必須栄養素を十分に摂取することである。

食事パターン

 1980年以前に存在した手掛かりは、他の栄養素または食事因子が孤立した栄養素のナトリウムよりももっと重要であるかもしれないと言うことであったが、1980年代初期のサイエンスに発表された2件の論文は、乳製品、果物、野菜のような多数の食事成分がどのような単一食事成分が及ぼすよりも個人の血圧にずっと大きな影響を及ぼす特別な可能性を生じさせた。それ以来、数多くの疫学研究、ランダム化比較試験、実験室研究がカルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、繊維などの決定的な血圧利益を証明した。それらの成分は十分な量の乳製品、果物、野菜を含む食事に含まれている。

 この分野の決定的な臨床試験は高血圧予防食(DASH)研究であり、その結果は1997年のニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンで発表された。この国立心臓・肺・血液研究所がスポンサーになった介入試験はリスクのある被験者の血圧に及ぼす単一の栄養素よりもむしろ食事パターンの影響を調査した。DASH食研究は1)果物、野菜、の豊富な食事と2)低脂肪乳製品と組み合わせた果物野菜食(DASH)に対して典型的なアメリカ食(脂肪が多く、繊維が少なく、ミネラルが少ない)をテストした。塩摂取量と体重は介入中を通して一定に維持された。

 DASH食では収縮期血圧はコントロール食と比べて5.0 mmHg以上低下し、拡張期血圧は3.0 mmHg以上低下した。コントロール食に比べて果物・野菜食による血圧低下も十分であったが、DASH食で達成された血圧低下の約半分しかなかった(収縮期血圧で2.8 mmHgと拡張期血圧で1.1 mmHg)。軽症高血圧者では、DASH食は収縮期血圧を11.4 mmHgと拡張期血圧を5.5 mmHg下げた。この食事の効果は軽症から境界域高血圧における減塩研究から報告されている一番良い結果よりも3から5倍も大きい。

 DASH研究の結果で、我々の栄養政策の強化は国民の血圧プロフィールを改善することに置くべきである、と言う明らかで強力なエビデンスを我々は最終的に持った。つまり、現存し成人で悪くなっているミネラル不足を修正する。低脂肪乳製品、果物、野菜の摂取量増加を奨励することは、単一の栄養素を摂取量を変えることに焦点を置くよりも血圧調整を改善することを通して、社会の心血管疾患危険率のプロフィールを改善することにはるかに大きな可能性を持っている。同等またはそれ以上の重要性は、その様な戦略が骨粗鬆症や癌の危険率を減少させるための国民栄養政策の他の観点と一致していると言う事実である。

 

コンセンサスを求めて

 19991月に国立衛生研究所の国立心臓・肺・血液研究所は塩と血圧に関する国立心臓・肺・血液研究所ワークショップを立ち上げ、最近の範疇を調査する目的でこの分野の科学的研究で入手できるごく最近のデータを議論し、それによって塩摂取量に関する公衆保健勧告を立案する。これらの議事録はまだ発表されていないが、参加した研究者達の多くの間でいくつかの点で一般的な合意が得られた。参加者は塩と血圧の分野で国内的、国際的に認められた科学者と医学者、国立衛生研究所、国立心臓・肺・血液研究所、食品医薬品局、アメリカ農務省、アメリカ心臓協会の代表者が含まれていた。

 このシンポジウムで示されたデータは、次のこれまで議論された問題は解決されたと参加者の結論に導いた。減塩は高血圧になっている老人について最も利益があるらしい;減塩のランダム化比較試験結果は全人口の血圧に及ぼす最小の効果しか示さない;アメリカ人口の少数にしか塩の高血圧効果に対して感受性がないことなどが同意された。減塩は加齢に伴う血圧上昇率を減少させると主張することはインターソルトの解析から適当でないと無関係な統計専門家達は報告した。しかし、減塩推進論者達によって論争は一貫して続いている。さらに、ナトリウムに対する感受性の多くはミネラル欠乏によるらしいことが指摘され、栄養完全食、すなわちDASH食は減塩で達成されるよりもはるかに大きい血圧改善効果を生み出すことを指摘した。最後に、減塩と関係した逆効果があるかもしれず、減塩が心血管疾患の結末を改善すると言うエビデンスはほとんどないことが認められた。

 

公衆保健政策

 定義により、公衆保健政策は社会の健康を促進させることを意図している。そのような政策がこの目標を達成すれば、政策は公衆保健を促進させるために立案された範疇に合致しなければならない。公衆保健政策勧告は次の疑問に対する答えが全て“イエス”である場合だけ正当化される:

1)その解釈がほとんどの人々に利するか?

2)利益が全人口に重要か?

3)減塩が公式な目標を達成する最も有効な手段か?

4)減塩は安全か?

5)減塩は心血管疾患による死亡を減らすか?

 血圧を下げる、または高血圧発症の危険率を下げるために特別な塩摂取量を推奨するとき、これらの疑問のうち一つでも疑いの余地なく“イエス”と答えられない。したがって、我々は本論文の表題で提出している疑問に対する答えを持っている:“塩についての食事ガイドラインを混乱させるべきか?”明確に混乱させるべきである。