戻る

低塩摂取量と心血管健康:答えられていない質問。N.Campbell博士からの手紙

‘反対者と塩摂取量:オドンネルらによる論評についての関心事’への返信

Low Sodium Intake and Cardiovascular Health: An Unanswered Question. Response to: Letter from

 Dr N. Campbell,Dissidents and Dietary Sodium. Concerns about the Commentary by O’Donnell et al.

By Martin O’Donnell, Andrew Mente, Salim Yusuf

Int. J. Epidemiol. 2017;46:367 - 369   2016.12.30

 

‘間違いは何回も言うことを理由にして真実にはならないが、誰もそれを見ることはないので、真実は間違いにはならない’「マハトマ・ガンジー」

 

 我々の招待論評に基づいたトリンコートらの最初の論文は塩論争で研究者達の本質的な性質を示す証拠に基づいた出典である。彼等の結果は‘現実からそれほど遠くないと思われる’彼等の結論を報告している巻頭言でこの分野における我々の逸話的経験とブルース・ニール博士の結果とも一致している。

 最初の分類として、キャンベル博士は全員の減塩と全人口に低摂取量(5.8 g/d以下)まで減塩との区別することを繰り返し失敗している。2.3 g/d以下の塩摂取量は‘正常な’摂取量と考えるべきであると言うキャンベル博士の勧告は、この摂取量が人口の1%以下で摂取されているので、重要とすべきではない。高い塩摂取量(10.2 – 12.7 g/d以上)の人々で減塩の重要性に我々は疑問を持ってこなかったし、事実、高塩摂取量で心血管疾患の危険率増加を報告した大規模な国際研究を我々は発表してきた。曲線である塩摂取量と血圧とのポジティブな関係に我々は疑問を持たないだけでなく、事実、塩摂取量と血圧との関係を確認した大規模な国際研究を発表した。一方、減塩臨床試験のメタアナリシスは短期間試験で意味のある血圧低下を報告し、6ヶ月以上の長い試験による血圧低下は試験の最近のメタアナリシスでは意味がなかった、したがって、長期間試験が血圧効果を消してしまったと言う主張は我々の意見に基づくのではなく、最近のメタアナリシスから演繹された。減塩の短期と長期の両試験でレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAAS)の活性化があり、後者はキャンベル博士によって引用されたメタアナリシスの更新されたメタアナリシス(2013)に基づいており、博士は長期間試験(2004)RAASに何の影響も及ぼさなかったエビデンスを報告した。現在のエビデンスに基づく我々の立場は高塩摂取量を中程度の摂取量範囲に下げる十分なエビデンスがあるが、全人口に低い摂取量までさらに減塩させることを支持するデータは不十分である。

 新しい情報に直面しても、我々は疑問を持たないで現在のガイドライン勧告値を受け入れるべきであるとキャンベル博士は示唆している。閉経後の婦人にホルモン置換療法の幅広い使用を我々はまだ勧めていることをそのようなアプローチは意味している。キャンベル博士が意見を異にする人々を考えていることは診療を手引きするために進化と動的科学的根拠の必要な部分である。新しい情報が現れてくるにつれて、古いドグマは挑戦され、新しいエビデンスと古いエビデンスの強度に応じてガイドラインは変わる、または変わらないかもしれない。塩摂取量が少ない所ではエビデンスによる根拠が不完全である領域については、これは特に重要で、そのような領域では中程度(平均)の摂取量と比較して低塩摂取量(5.8 g/d)の集団で心血管疾患(CVD)の意味ありそうな低い危険率を報告した研究(観察または実験)はなく、多くはCVDと死亡の危険率増加を報告している。キャンベル博士は低塩摂取量で高いCV危険率を報告した研究の限界に焦点を置いているが、低塩摂取量(中程度の摂取量と比較して)の全集団でCVD/死亡率の意味ありそうな低い危険率を報告している一次研究はないと言う事実を無視している。

 2010年より前に、CVD予防のために我々は低塩摂取量を受け入れ促進させた。したがって、我々の意見は情報の変化と共に変化させてきた。研究者として、我々の主な焦点は塩摂取量と健康の関係に関する最初の調査研究を行うことである。異なった集団(例えば、一般的な集団、高血圧者、心不全者)で健康結果に関する低塩摂取量の大規模なランダム化比較試験の実行を我々は主張している。確実性の主張を通して新しい研究を抑制するよりもむしろ可能性と低塩摂取量の正味の臨床効果について著しい不確実性があるからである。

 低塩摂取量についてのエビデンス根拠が不十分であると意見を支持する科学的機関はないとキャンベル博士は間違って述べ、この問題に関する2013年の医学研究所委員会報告を読むように我々は彼に奨励した。その報告書は低塩摂取量について勧告値を支持するエビデンスは不十分であると述べていた。これはこの領域で前に何も発表してない独立した研究者達(委員長を含む)と互いに異なる意見を持った研究者達を含む委員会であった。疑問は、同じエビデンス根拠に関してどうして異なった機関が異なった結論に達するのか、そして塩摂取量に関して固定して偏向した立場の研究者達に影響を及ぼすのは何か?と言うことになる。

 トリンコートらの論文からの結果は、研究で選ばれる参考文献は特別な立場を支持する著者らによって使われた。キャンベル博士の手紙には多くの例が含まれており、1例は塩摂取量について式から導かれた推定値の使用を批判した研究の文献引用である。1研究は国際研究のサブグループ解析(n=120、全コホ-トの11)であった。我々は空腹時早朝尿試料からの塩摂取量を推定する式から導かれる方法を確認するために行った方法である。当然のこととして、幾つかのセンターは総合的な報告書よりも低い、または高いクラス内相関(ICC)を明らかにし、そうして最良または最悪のセンターに選択的に強調することは適当ではない。加えてこの1センターからの報告書は不完全な24時間尿収集(24時間尿収集固有の限界である)の個人を含んでおり、それは確認研究には適切ではなく、国際的な確認結果の主な解析はそのような参加者を含んでいなかった。一回の空腹時早朝尿試料と24時間尿収集との比較のより適切な引用文献への反映は主な確認研究(n=1083)の結果で、それは0.71と言うクラス内相関を報告した。さらに、我々の式で得られた推定値を使った塩摂取量または24時間尿試料からの推定値対血圧との関係は同様に強力であった。

 我々は食品業界あるいは塩産業界から研究資金を受け取っていない。しかし、キャンベル博士は繰り返し資金受取りの印象を作り出そうと努力している。我々のそれぞれ(キャンベル博士を含む)は数多くの科学的会合で発表し、製薬業界、食品業界または他の業界で支援されている機関の組織委員会に参加してきた。現在の基準は利益の潜在的な衝突としてこれらを含めていない。ユスフ博士はキャンベル博士が述べている特許から財政的な資金を受け取っていないし、誰も食事研究に関係していない。心臓病予防評価研究で行われた研究についての特許は塩あるいは如何なる食品とも関係ない。財源はマックマスタ―大学に2講座(1つは平和と健康、もう一つは糖尿病)を作るためと、カナダの様々な大学で教育するために低収入諸国からの約20人の学者を支援するカナダ心臓予防評価奨学金の設立のためにカナダ保健研究所に寄付された。ユスフ博士はこれらの特許から何の財政的な利益を得なかった。食品産業界に関しては、そこから我々は研究資金を受け取っていないし、彼等は高塩摂取量を減らす努力で主要な参加者達であるので、彼等を科学的論説に含めるべきか、外すべきかに関する本格的な論争がある。キャンベル博士が関連している‘食品政策’会合は専門家達の委員会によってカナダ保健科学アカデミーと世界心臓連盟によって組織されたが、彼等の誰も食品産業界との関係はなかった。塩摂取量に焦点を置いたこの会合の部分は人口の塩摂取量に関する医学研究所専門委員会の結果によって刺激された。キャンベル博士や彼が勧めている人々を含めて多様な意見を発表する講演者達に招待状が出された。彼は最初、招待を受け入れたが、その後まもなく幾つかの条件が整わなければ参加を撤回するとして会合を保留した。彼の要求は不合理であると組織委員会は結論し、話題について二者択一の意見を述べることを目的とした。それでキャンベル博士は講演者になる彼の同意を取り下げた。講演者達の最後のグループは、彼等が何らかの業界界と、あるいは何の産業界とも関係しているかどうかを明らかにするように要求された。様々な意見を述べた研究者達の作業部会で委員会は結論を出し、全ての演者からの資料を含めて要約が用意された。総会からの報告書は広範囲な査読後にアメリカ心臓協会誌に発表された。

 今の時点では、心血管予防のために低塩摂取量を勧めるエビデンスは不十分であると言うことが事実である。我々の総合力は塩摂取量勧告値を知らせるために、我々の総力を挙げてランダム化比較試験から確実なエビデンスをもたらす方向に向けるべきであり、そのような努力を抑えるよりもむしろ支持するために我々はキャンベル博士を激励するだろう。