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意見:塩論争の意味

Opinion: Making Sense of the Salt Debate

By Christopher Labos

Montreal Gazette July 3, 2016

 

最近、この件について私に多くの人々が尋ねてきたが、塩論争はすぐに収まる気配がない。何となれば、“塩仮説”を巡る戦いはますます分裂し、厄介になってきている。

 

 過去数十年間、高塩摂取量は高血圧を引き起こすと一般的に了解されてきた。塩はナトリウムと塩化物からなる分子である。ナトリウムは神経や筋肉を適正に機能させるために必須なイオンである。しかし、食卓塩の形で多くのナトリウムを食べ過ぎると、医学的な問題を引き起こす。

 第一に、ナトリウムを摂取すればするほど、ますますそれだけ体内の水量は多くなる。したがって、鬱血性心不全または腎臓疾患のある人については、水が溜まることは腫れや胸に水が溜まることになる。

 高ナトリウム摂取量は高血圧をも引き起こす。興味深いことに、必ずしも全ての人々がナトリウムの効果に同じように感受性である訳ではない。老人、既に高血圧になっている人、肥満者、またはメタボリック症候群の人は全て一般的な人々よりも塩に対してより感受性であるように見える。遺伝も関与しているように思える。塩感受性はアフリカに祖先を持つ人々でより一般的であるからだ。

 しかし、必ずしも全ての研究者が同意している訳ではない。過去数年間の研究は“塩仮説”に疑問を投げかけてきた。その中には低塩摂取量が心血管疾患の危険率を実際に増加させるかもしれないことを示唆したマックマスタ―大学からのランセット研究がある。研究には2つの問題がある。

 第一に、研究者達は塩摂取量を測定しなかった。彼等は尿中に排泄されるナトリウムを測定した。そしてそれは研究手段として受け入れられながら、時間の約60 -70%を占めるより粗雑な他の測定値と相関しているだけである。

 第二に、低塩摂取量グループは全集団のわずかしか占めていなかった(全部で10%、統計的な調整後では3%以下)。非常な低塩摂取量を達成することは実質的に不可能である。ナトリウムはほとんどの生物に存在しているからである。革新的であるにもかかわらず、高塩食は心臓発作や死亡の危険率を増加させることを研究は示したことを指摘したことも重要である。

 塩を巡る論争の伴う問題は、それが対立するようになってきたことである。

 ほとんどの研究は塩仮説を支持するが、重要な少数が支持しないことを国際疫学学会誌のレビューが明らかにした。しかし、もっと心配なことは、反対グループ間の対話がほとんどなく、この意見の相違は信仰に向かっていることである。

 研究者達は自分達の立場に同意する研究だけをしばしば引用し、立場を否定する研究を度外視することを解析は明らかにした。論文を巡る考察は同じ様に火薬となることが分かった。“信じない人々は”独立した保健研究ネットワークであるコクラン・レビューを強調している。レビューは結論に達しておらず、利益について弱いエビデンスを提供しただけであった。

 減塩の利益を示せなかった研究の多く(必ずしも全てではない)は結果に既得権利を有している食品産業界から財政援助を受けていたと“信心者”は指摘している。疫学雑誌の皮肉な論説で、科学は真実か、真実でないかについて論じているのではなく、事実について論じていることを指摘している洞察に満ちたコメントをジョン・イオアニディスは述べた。そしてしばしば我々は不確実性を認識していなければならない。

 塩含有量の高い食事は悪いと我々はかなり確信できるが、同時に非常に低い塩含有量の食事が危険であるかどうかについては何某かの不確実性があると私は思っている。しかし、実際の立場から、その様な極端に低い塩含有量の食事をできた人々はほとんどいない。したがって、特に老人、肥満者、高血圧者は過剰の塩摂取量を避けるために料理に塩を加えない、調理中に塩の使用量を最少にすることがかなり合理的なように思える。食事を美味しくするために私はむしろニンニクを使う。ニンニクが本当に血圧に良いかどうか私にはわからない。しかし、少なくとも吸血鬼を遠ざける。