減塩は健康に悪いか
Could Using Less Salt Be Bad for Your Health
By Pat Hagan for MailOnline 2012.07.16
食事で塩の摂取量を減らす必要性は過去10年間で最も強力な国民保健メッセージの一つであった。1日当たり平均塩摂取量を8 gから6 gに減らすことはイギリスで1年間に推定17,000人の命を救うだろう。これは脳卒中の数で22%の予測された低下と心臓発作で16%の低下のおかげである。長期間では目標はさらなる減塩である。政府の保健監視機関であるNational Institute for Health and Clinical Excellenceは2025年までに1日当たり平均摂取量をちょうど3 gまで減塩することを求めている。しかし、あまりにも少ない塩摂取量はあまりにも多いい塩摂取量と同じほど危険であるかもしれず、摂取量さらに減らし続けることは心疾患による死亡の増加を実際に起こすことを何人かの専門家達は今や言い始めている。アメリカ高血圧学会誌に発表された論文は、一度1日当たりの平均摂取量が6.25 g以下になると、心臓発作と脳卒中の危険率は再び増加し始める、と警告している。
この理由については不明である。しかし、減塩がコレステロールとトリグリセライドの濃度を増加させ(両方とも心疾患を引き起こす有害な脂肪である)、インスリン抵抗性(二型糖尿病の初期段階)にもなるという数少ないエビデンスもある。
ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医学校からの研究者達は身体に及ぼす塩の影響に焦点を当てた23件の異なった研究結果をプールした後に警告を発した。論文の筆頭者であるミカエル・アルダーマン博士はアメリカ高血圧学会の前会長であり、約5年前に一律の減塩について最初に関心を示した。消費者は1日当たり最高6 gまで塩摂取量を減らすように勧告されるべきではなく、最低6.25 g、最高15 gに塩摂取量を維持するべきである、と彼は警告している。‘この範囲以上と以下の塩摂取量は心臓血管疾患危険率の増加と関係している、’とアルダーマン博士は言っている。平均塩摂取量が幅広く1日当たり8.75 gを取り囲んでいる人々については、摂取量を変えることが健康結果を改善すると言うエビデンスは何もない。科学的エビデンスを集めることが一律の減塩の健康効果についての不確実性を増してきた。
しかし、他の血圧専門家達は、アルダーマン博士の関係は彼の主張の信頼性に疑いを投げかけている、と言っている。塩協会の代わりとして会議に出席するために1990年代の半ばに750ドル支払われたことを彼自身認めている。塩協会はアメリカ合衆国の塩製造者を代表しており、12年間、塩協会の食事勧告委員会の無給メンバーとして勤めた。
‘彼は何年間も減塩反対運動を行ってきており、塩協会と密接に運動してきた。これらの主張は新しいものではなく、貧弱なエビデンスに基づいている。’とグラハム・マグレガー教授は言う。彼は塩と健康に関する世論行動(CASH)の会長で、減塩運動を進めるために1990年代半ばにイギリスで設立された。しかし、アルダーマン博士は次のように主張している。‘私は塩協会から他にお金はもらったことはなく、または他の商業的利益は塩に含まれていた。要するに、私には利害衝突はない。’
塩は我々の身体機能の発揮で重大な役割を果たしている。その科学的名称は塩化ナトリウムで、40%のナトリウムと60%の塩化物から成っている。ナトリウム成分は体内を循環する水量を制御するために極めて重要で、神経信号を伝え、筋肉収縮を制御し、体内の酸・塩基平衡を維持することに役立っている。塩化物は消化工程で役立ち、呼気を通して廃棄するために二酸化炭素を肺まで運ぶのに役立っている。
過剰の塩摂取量の安全性についての疑いは20年以上も前に初めて出てきた。当時、イギリス政府の勧告委員会は高血圧との関係についての関心から毎日の食品の塩含有量に取り締まりを要求した。過剰の塩は腎臓によって排泄されるまで血流中で水を保持することにより血圧を上昇させると考えられている。これは心臓周りの血管にストレスを加え、脳卒中や心臓発作の危険率を増加させる。
塩は、たとえわずかな量でも果物や野菜を含めてほとんどの食品に自然に含まれている。しかし、我々が摂取する塩の約75%はレストランの食事、持ち帰り食品や加工食品から来ており、製造者達は安い調味料として塩を使っている。例えば、マクドナルドのビッグマックは2.1 g、イギリスの朝食は約4.5 g、パブのパイ・アンド・マッシュ食事は約7.5 gの塩を含んでいる。その日を健康にスタートさせるとして食べられるかもしれない朝食用のボウル1杯のコーンフレークでさえも1 gの塩を含んでいる。
塩に関する政府の警告は過去10年間で1日当たり9.5 gから8.1 gに下げるためにイギリスの平均的な大人の摂取量を原因としている。そのことにより年間約8,500人が救われると推定されている。ブリテインは世界中のどの先進国の中で最低の塩摂取量であると現在言われているが、摂取量をもっと下げれば、より多くの命を救える、と多くの専門家達は言っている。
しかし、しばしば研究は減塩の利益に疑問を投げかけてきた。1972年に、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表された論文は、食べる塩が少ないほど、腎臓によって分泌される物質であるレニンの濃度がそれだけ高くなることを示した。レニンの増加は心疾患の危険率増加をもたらす一連の疾患の引き金を引くように思われた。昨年、エクスター大学の研究者達は7件の異なった研究からのデータをプールして、減塩が死亡を少なくすることにつながると確実に言えるエビデンスはほとんどないことを知った。さらに悪いことに、既に心不全になっている人々や、低塩食の人々の中で死亡の危険率増加を研究は暴露した。7件の研究は低塩食を食べてきた正常血圧者または高血圧者の6,489人を含んでいた。しかし、彼らは死亡や心疾患の罹患率に何の低下も示さなかった。減塩の利益を示した他の研究は、低塩食者達が多分、多くの果物や野菜も食べ、喫煙や通常の運動もしなかった事実を単純に無視したかもしれない、と研究チームは警告した。
エクスター大学の研究を率いたロッド・テイラー教授は、減塩の利点と同様に危険性を調査するためにもっと研究が行われることが重要である、と言った。‘塩摂取量についてかつて低い目標値を設定した政府にとって、減塩の利益と危険性を十分に理解するためにいくつかの大規模な研究試験を行うことは本当に重要である。’と彼は言った。
一方、2010年に、オランダ研究は老人の中で低い塩摂取量と転倒と骨折の危険率増加との関係を見出した。ボランティアは骨粗鬆症の兆候を示さなかったけれども、あまりにも少ない塩摂取量は骨の質に何某かの影響を及ぼす可能性があることを研究者達は言った。食べ物に塩をほとんど、または全く加えない未開発社会と塩辛い食事をしている工業国の国民との間の血圧の差に焦点を置いただけの研究でも40件以上あるとCASHは主張している。
低塩食は死亡を少なくすることにつながると言うエビデンスには欠陥があることを認めている。それは主として結果を出すために試験を行う兵站業務が非常に禁じられており、一つのグループの人々に高い塩摂取量を摂らせる倫理的な問題があるからだ。
しかし、塩と血圧に関するブリテイン主導的な専門家の一人であるマグレガー教授は過剰な塩摂取量の危険性に関するエビデンスは圧倒的に多いと主張している。‘減塩は危険で、減塩を支持するエビデンスは本当にないという絵をある人々は描こうと試みている。これは喫煙の危険性が最初に気付いた時と同じであるが、それでもタバコは肺がんを引き起こさないと、まだ主張している人がいる。減塩の危険性に関する本当のエビデンスを誰かが見出せば、その時にはCASHはそれを非常に綿密に考察するだろう。しかし現在では、1日当たり6 g以下の減塩は有害であると言うエビデンスは多くの疫学的なエビデンスにより覆い隠されている。それらのエビデンスは6 g以下の減塩は血圧を下げ、心臓発作や脳卒中になる人々を減らすことを示している。’
味蕾を欺く低塩食
科学者達は食品中の塩と砂糖を1/4減らしても同じ風味を得る新しい方法を発見した。オランダの研究者達は25%少ない塩結晶を使いながら味を強化する新しい方法の特許を取った。食事中のほとんどの塩や砂糖は加工食品と同じ様にパンや既成食品のような毎日の食品の中に隠されている。塩摂取量の1/3はパンだけから来る。しかし、それを均等に混ぜる代わりに、塩または砂糖を均等ではなく層または筋として加えることによって、味はより強くなることをオランダの科学者達は知った。非常に塩辛い所とあまり塩辛くない所との対比や非常に甘い所とあまり甘くない所の対比で、脳では味がより強く記憶されることとなり、少ない塩や砂糖で同じ味を作り出せる。
ワーゲニンゲン大学のマーカス・スタイガー博士は次のように言っている:‘舌の上の味覚受容器は刺激の差により強く応答するように見える。したがって、例えば、塩辛いドウと塩辛くないドウを混ぜてパンを作る、または甘いバターと甘くないバターを混ぜてマフィンを作ると、消費者達はより強い味を得ることができ、同じ味に必要な塩や砂糖は少なくなる。’
消費者達に差を全く気付かせなくするために、食品科学者達は筋または2 mmから2 cmの範囲の異なった厚さの渦巻きで‘ホットスポット’の濃い塩または砂糖を味あわせようとしている。現在、結果は特許となっており、世界的な大手食品会社、VIONとFriesland Campinaによって採用されており、その技術を使った製品がスーパーマーケットの棚に置かれるまでに2,3年はかかる、とスタイガー博士は言っている。新しい低塩食品も同じ原理を使って作られている、と彼は付け加えた。
‘全て行っていることは成分を食料品内に分散させることである。特にセリアル製品やパンは食事の中で塩の主要な供給源であるので、量を減らすことが重要な健康利益につながることを期待されている。’
CASHの運動指導者である栄養学者のキャサリン・ジェンナーは結果を歓迎している。‘1日当たり塩摂取量を推奨値の6 gまで下げるためには、より少ない塩に味蕾を慣れさせる必要があり、それには時間をかけて徐々に行っていく。’と彼女は言う。‘しかし、この技術がたまたま我々全てに役立つ安全な食品技術になるまでに、より少ない塩摂取量にすることは長期的に我々の健康に利益となる。’と国民肥満フォーラムのデヴィッド・ハスラムは言った。肥満の危機は、政府が食品会社に分からないように健康的に食べることを奨励するように変わってきていることを意味している。
‘この結果は人々に気付かせることなくカロリーを減らすように食品製造者への政府の要求に非常にかなっている。政府は食品会社に皆の食べる量を1日当たり約100カロリー減らせるようにさせたい。会社はこの技術により砂糖と塩の両方を同時に大量に減らせるので、良いニュースである。’