あまりにも少ない塩摂取量は心臓発作や脳卒中の危険率を増加させる
かもしれない、と論争となりそうな新しい研究は主張
Eating Too Little Salt May Increase Your Risk of a Heart Attack or Stroke, Claims Controversial New Research
By Lizzie Parry
MailOnline 2016.05.21
(訳者注: 2016.5.20の医学雑誌THE LANCETのOnlineで発表された論文を紹介したもので、減塩が危険になるかもしれないと述べていることに対して、強烈に反対している学者の意見も掲載している)
● 高い塩摂取量は心臓発作や脳卒中の危険率を増加させる、と長あいだ考えられてきた
● 新しい研究の結果は劇的に180度転換しており、低い塩摂取量でも同じ効果を示唆している
● WHOの専門家は‘悪い科学’と激しく非難し、研究を‘信用できない’と言っている
● WHOは毎日5 – 6gの塩を摂取するように勧めている
● しかし、平均摂取量はその2倍で、一日に9 – 12g 摂取している
塩の多い食事は心臓に危険であり、心臓発作や脳卒中の危険率を増加させると長い間言われてきた。しかし、180度転換した劇的な結果で、科学的事実はその反対も真実であるらしいことを示唆した。かつて信じられていたことと反対に、低い塩摂取量は利益がないかもしれないことを世界的な研究が明らかにした。平均的な塩摂取量と比較して低い摂取量はむしろ心臓血管疾患や死亡の危険率を増加させる可能性がある。
高名なLancet誌に発表された研究に強い反応が寄せられてきた。ある専門家は信じられないと言い、他の専門家は研究方法を批判し、その結果に疑問を呈している。研究はマックマスター大学とハミルトン保健科学の研究者たちによって行われた。塩摂取量と死亡、心疾患、脳卒中との間の関係が正常血圧者と比較して高血圧者で異なるかどうかに焦点を置いて、彼らは49ヶ国130,000人以上を解析した。彼らの結果は、高血圧者であるかどうかに関わらず、低い塩摂取量は平均摂取量と比較して心臓発作、脳卒中、死亡の大きな発生率と関係していることを示した。
筆頭著者でMcMaster’s Michael G. DeGroote School of Medicineの臨床疫学と生物統計学の准教授であるAndrew Mente博士は高血圧に悩んでいる人々のためには非常に重要な結果であることを認めた。彼は次のように言った。‘我々のデータは高血圧者の高い塩摂取量を下げることの重要性を強調する一方で少ない量にまで塩摂取量を減らすことを支持していない。減塩は高い塩摂取量の高血圧者を一番の目標にしていることを我々の結果は示しているので重要である。’
国民保健センター(NHS)は毎日6g‐約茶匙一杯‐以上の塩を食べないようにイギリスの成人に勧告している。
アメリカ合衆国では疾病予防管理センター(CDC)は1日当たり2,300mg以下のナトリウム(塩として5.84gに相当する)を摂取するように国民に勧告している。アメリカ人の平均摂取量が3,400mgのナトリウム(塩として8.64gに相当する)である事実を考慮してこの量を決めている。
過去においては、たとえ低い塩摂取量が血圧を下げることと関係していても、平均摂取量と比較して低い塩摂取量は心臓血管疾患の危険性や死亡を増加させることと関係していることをある研究は示してきた。
この新しい研究は、1日当たり3g以下と分類される低い塩摂取量と関係した危険性は患者の血圧とは関係ないことを示している。さらに、塩摂取量が安全ではないかもしれないほど低い限界がある一方で、高い塩摂取量と関係している害は高血圧者だけに限定されているように思われることを結果は示している。
世界的な研究では集団の約10%だけが高血圧者であるとともに1日当たり6g以上として定義されている高い塩摂取量者であった。
カナダとほとんどの国々の人々の大多数は塩の適正量を摂取していることをこの研究は示唆している、とMente博士は言った。高血圧で高い塩摂取量であるために最も影響を受けやすい人々で目標とする減塩は、中央アジアの一部や中国のような非常に高い平均塩摂取量の人々を除き、ほとんどの国々で集団全体への減塩にも望ましいかもしれない、と彼は付け加えた。塩摂取量について健康に良い1日当たりの最高限度として現在一般的に勧められている量はあまりにも低すぎるところに設定されているように思う、とも彼は付け加えた。‘低い塩摂取量は平均摂取量と比較してわずかに血圧を下げるが、低い塩摂取量は他にも効果がある。例えば、利益に勝るかもしれないいくつかのホルモンの有害な上昇である。’とMente博士は言った。
‘重要な疑問は非常に低い塩摂取量で血圧が下がるかどうかではなく、減塩が健康を増進させるかどうかである。’
論文の共著者でMcMaster University and National University of Ireland Galwayの臨床准教授であるMartin O’Donnell博士は次のように言った。‘塩摂取量と健康との関係に関して我々の理解にこの研究は役立つが、全集団に低い塩摂取量を勧めている現在のガイドラインの妥当性に疑問を呈している。特に高血圧者に焦点を置いた中程度に減塩を勧める方法は現在のエビデンスに一層一致しているように思われる。’
その結果を激しく攻撃して、WHO Collaborating Centre for Nutritionのセンター長でUniversity of WarwickのFrancesco Cappuccio教授は‘悪い科学’としてその研究を非難した。研究者達が特に早朝尿テストを使って塩摂取量を調査し、‘不正確な式’を使って24時間の結果を推定したと言う方法を彼は批判した。‘Lancetに発表された悪い科学を読まなければならないとは信じられない。心臓血管疾患を予防するために中程度の減塩を進める世界行動を支持するエビデンスは強く、そのような研究は世界的に減塩するために協力した公衆保健行動を覆すべきではない。’と彼は言った。研究者たちの方法を他の専門家たちが批判することで彼の痛烈な評価は支持された。
World Action On Saltの会長とQueen Mary UniversityのGraham MacGregor教授は次のように言った。‘高血圧の原因が塩であり、減塩は血圧を下げ、脳卒中や心臓発作を予防するというエビデンスは圧倒的に多くある。設計に弱点があるためこの現在の研究はイギリスや世界でも減塩する公衆保健勧告をひっくり返すことはない。’